風に吹かれて

~愛すべきこの街に誰が沈めたというのだろう~

雑記⑧

クリエイティブ集団『PERIMETRON』と共に活動する常田さんのドキュメンタリーフィルムを視聴した。

ヌーにしてもミレパにしても、最初は今ひとつ刺さらなかった。さらに書くと(まだ書くんかい笑)タバコの煙やお酒の匂いが漂う薄暗い部屋で、夜深い時間まで活動している彼らは、私には縁のない人たちだと思っていた。

それでも惹かれる何か。

わからないからこそ知りたくなるという私の癖のせいか?いや、それだけではない何かがある。なんだろう?

ここで、ミレパの常田さんは、奏者でありながらオーケストラの指揮者のような存在であるということに気づく。

例えば、紅白でのパフォーマンス。テレビの音がアレなので今ひとつ迫力がなかったが、歌い手と奏者とクリエイティブ集団の音や映像が大挙して押し寄せてくるプロジェクトは、さながら現代版オーケストラのようだった。

 

そういえば私、

オーケストラ好きだったわ。

 

オーケストラの演奏を聴きに、サントリーホールなどによく行った。時々異空間に吸い込まれそうになったが、離席していたはずのシンバル奏者が静かに現れ「バリ〜ン!」という音を鳴らすと、一瞬にして現実世界に戻された。失敗したら全てが台無しになる「バリ〜ン!」の音で、何もかもが許されたような気持ちになった。

(そもそも失敗しないし、許す許されるの話でもないが)

 

ドキュメンタリーフィルムの話に戻る。

終始穏やかな雰囲気を漂わせていた常田さんだが、取り巻く空気が一瞬変わったように感じたシーンがあった。それは、クラシックや洋楽しか知らなかった彼が、音楽関係者に「この音楽ではビジネスにならない」と言われたことを話したとき。

これが着火剤だったのかな?

その後、全く知識のなかったJポップを米津玄師さんに教えてもらい、その結果『白日』を世に送り出したらしい。着けた火を絶やさなかったのだ。

そして今、何かに追い立てられるように活動していると感じている常田さん。それは「強迫観念」のようだとも語っていた。

そう感じながらも、1992年生まれの彼が「1000年後にも残っていてほしい」という想いから『2992』という作品を作り披露する。

混沌とした時代に、彼は一体何を残すのだろうか。そんなこと考えたドキュメンタリーフィルムだった。

 

今年はオーケストラを聴きに行こう。

 

おしまい